金融所得増税“先送り”なぜ?財源は?記者解説(2021年10月11日)

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岸田総理は総裁選でも、総理の就任会見でも「金融所得課税についても考えてみる必要がある」と言及してきました。しかし、10日の民放番組で「金融所得課税について、さわることは考えていない。総裁選の時に挙げた一つの選択肢ばかりが注目されて、すぐやるのではないかという誤解が広がっている」と述べ、11日の代表質問でも「分配政策には優先順位がある」として、当面は見直しに慎重な姿勢を示しました。

金融所得課税について、考えていきます。政治部官邸キャップの山本志門記者、経済部・岡田豊デスクに聞きます。

(Q.なぜ、急に見直しに慎重な姿勢を示したのでしょうか?)
政治部・山本記者
 政府・与党内からは「そうあるべきだ」という意見もある一方で「これで信用を失ったんじゃないか」という厳しい声も聞こえてきました。株価の下落が続いて、早急に手を打たなければいけないというのが大きな理由です。

 岸田総理が「一つの選択肢ばかり注目されて、すぐやると誤解された」と言っていますが、岸田総理が金融所得課税に力を入れれば入れるほど、株価が反応するのは当たり前の話です。見通しの甘さがあったんじゃないかと思います。

 世界経済を見てみると、中国の恒大集団は破綻含みのリスクがあります。世界経済はリスク含みのなかで進むなか、自民党内からは「今これを推し出すのはセンスがない」といった意見も出ていました。こうしたなか、岸田氏が総理になってから株価の下落が続いていました。何とか火消しをしなければいけないということで、メッセージを出すことを迫られたんだと思います。

(Q.株価は持ち直しましたか?)
経済部・岡田デスク
 日経平均は終値で400円以上、上がりました。理由は2つあります。1つ目は、たぶんこっちの方が強いと思いますが、2年10カ月ぶりの円安になりました。2つ目として、岸田総理の金融所得課税の見直しを先送りしたことで、買われたと市場関係者は言っています。

(Q.どのあたりから金融所得課税への反発があったのでしょうか?)
経済部・岡田デスク
 株価が下落してしまうということで、証券や銀行業界などからの強い懸念を、岸田総理が汲み取ったのではないかというのが一つの見方です。

 一時の困惑が目先の安堵に変わったと思いますが、これを聞いてみました。
大手銀行関係者:「投資家が日本市場から遠のく可能性。金融機関では重大な懸念を抱いている」
証券会社関係者:「岸田総理は評判通り話を聞く人。市場の声を聞いてくれてた」
 東証の売買のシェアは、外国人が6~7割を占めています。それが引いてしまうと、大きな影響があります。

(Q.分配を期待していた人から批判はありませんか?)
政治部・山本記者
 今後、アベノミクスからの転換を打ち出して、金融所得の課税は目玉でした。これを下ろすということは、岸田総理のカラーが失われています。今後、こういったことが続くと、政権運営の求心力に影響してくる可能性があります。

 これが直ちにダメージにつながっているという見方をする人は少ないですが、信用を失い始めるきっかけじゃないかと見る人もいます。こういった判断のブレが続けば影響が出てくる可能性があると思います。

(Q.金融所得課税によって得られる分配のための財源は、どのくらいの規模ですか?)
経済部・岡田デスク
 今の一律20%(住民税含む)を25%に上げて、対象を1億円以上にした場合、1000億円の税収という試算があります。これについて、ある財界関係者は「金額が小さく、政府の政策的な有効度合いは期待できない」と話しています。

 実はアメリカも同じ状況です。バイデン大統領は、大統領選の公約で、富裕層への所得税の最高税率引き上げの案、キャピタルゲイン税課税の強化を野党とやっていますが、野党・共和党は反対しています。アメリカの金融業界は非常に力があるため、結局、骨抜きにされてしまうのではないかという指摘がされています。

 OECD(経済協力開発機構)がまとめた『世界の平均年収』を見ると、日本は約435万円と、G7のなかで2番目に低くい水準です。

(Q.岸田総理は分配を打ち出しましたが、アベノミクスの修正になっていないという声もありますか?)
経済部・岡田デスク
 なぜ分配が大事かというと、所得格差の是正です。なぜこれが必要かというと、例えば、この厳しいコロナ禍で、日本国民は暴動などを起こさず、大きなデモもせず、粛々と誠実に懸命に戦っています。アメリカなど格差の大きい国は、強いルール、厳しい警察の強制能力で国民をまとめあげています。日本はなぜそれができるかというと、当事者意識が強いためです。当事者意識がなぜ強いかというと、日本は格差が小さいから、みんな似たり寄ったりだということで、冷静沈着で、人の心を持った対応ができると言われています。だからこそ、格差是正が必要だという話だと思います。

(Q.一本芯の通った政策が必要だと思いますが、岸田総理に何を求めますか?)
政治部・山本記者
 今回、岸田総理は格差是正、中間層の所得を分厚くしていくというのが、一丁目一番地ですから、簡単に旗を降ろすとは思えません。ただ今回、選挙前ということもあってか、国民の負担増、痛みの部分については語っていません。これは、選挙前にもしっかりと語ってほしいと思います。
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Posted by chobi